2012年4月21日土曜日


飼い猫、野良猫の扱い方の実用ガイド

世界動物保護協会(WSPA)は、世界91ヶ国に400以上の加盟団体のネットワークを有する国際組織です。WSPAは、国際連合(UN)と欧州会議(CoE)に代表を派遣し、世界保健機関(WHO)とヨーロッパ獣医連盟(FECAVA)と協力して活動しています。

WSPAの「ペットの尊厳を守る活動」では、地域社会におけるペットの処遇改善を目指しています。

 1997年 初版発行 2001年2月 改訂版発行 

訳者 林裕美子


目次

付録


このガイドは、WSPAが発行する「野良犬対策」とともに、1993年に出版されました。個人、動物保護団体、市町村行政当局、動物を扱う専門家が、人道的で効果的な猫の世話の仕方や繁殖対策について知り、それを実施していくのに役立ててもらうことを目的としています。

多くの先進国では、いまや飼い猫の数は飼い犬の数を上回っています。猫は、小さくて忙しい現代の家庭には理想的なペットと言えます。優雅な立ち居振る舞い、清潔で鳴き声をたてず、可愛がると反応するけれども、うるさくまとわりつきません。しかし猫も、世話をし、可愛がってやらなければなりません。放っておいたり、虐待すると、家に戻ってこずに野良猫の仲間入りをするでしょう。妊娠中の猫が子供を産むために家を去ると、自由生活をする猫、あるいは野良猫の集団が新たに生まれることになります。

一組の猫から生まれる子孫は、6年間で42万匹にもなるかもしれません。

暖かい地方では、猫はほとんどの時間を戸外で過ごし、人からは、最低限の食べ物をもらい寝場所を提供されるだけかもしれません。自由生活をしていると、人に繁殖を制限されることがなく、生まれてくる子猫は、餓死したり、病気、事故、虐待に会ったり、他の動物から攻撃されたりする危険があります。

猫の世話と繁殖対策に関するWSPAのプログラムは、「WSPAペットの尊厳を守る活動」の一環です。

活動を進めていくには、3つの段階を踏まなければなりません。

  • 飼い主は、飼い猫の世話や、繁殖しすぎないような対策についての責任を負うことを伝えていきます。
  • 猫の保護にたずさわる人には、飼い主がいない猫には良質な収容施設を用意したり、里親を探すなど、保護するための環境を改善をしていくよう促し、また避妊去勢キャンペーンを推し進め、野良猫が置かれている状況を理解するように求めます。
  • 関係省庁や地方自治体に、法整備や一般市民の啓発に力を入れるよう助言していきます。こうすることで、猫の置かれた状況が改善され、飼い猫に対する飼い主の責任意識が高まります。

本冊子は、このような活動を推し進めていくのに必要な情報を盛り込んでいます。 


人が家畜化した動物のなかで、猫は、一番最近になって人に飼われるようになった動物です。まだ完全に家畜化されていないので、最低限の世話をするだけで繁殖できるという人もいるでしょう。にもかかわらず、猫は今では、すっかりペットとして定着しています。2000年現在で、ヨーロッパには、4100万匹以上もの猫がいると言われます。

飼い主が、猫を飼うことの一番の恩恵として挙げるのが、寂しさを紛らわせてくれるということです。この他にも、血圧を下げるなどの健康面でのメリットもあります。うれしそうにのどを鳴らす猫をやさしくなでることほど、気が休まることはありません。

子供にとっても、自分以外の存在に気を配り世話をすることは、情操教育にうってつけです。高齢者にも歓迎される動物で、精神衛生的な治療効果を期待できます(I. Robinson編集、「人と動物の関わりについてのウォルサムブックス:ペットを飼うことの効能と責任」1995年、Pergamon Press出版)

イギリスには800万匹以上猫がいますが、出生暦が明らかな猫は8%ほどに過ぎません。大半は、購入したものではなく、友人から譲り受けたり、捨て猫を拾ったりしたもので、最近では、動物愛護団体などの保護施設から貰い受けるケースが増えています。他の先進国でも状況は似たようなもののようです。 

飼い猫は、かなり広い範囲をなわばり確認して歩きます。去勢されていない発情期の雄猫や、安全な出産場所を探している雌猫の場合には、特にこの傾向が強いようです。きちんと餌をやらず、寝床を用意しない飼い主や、飼い主や子供から不当な扱いを受けている家庭には戻らないことも多いでしょう。

餌を貰えなかったり、家に入れてもらえないような場合には、他の場所で餌やねぐらを探し、面倒をみてくれる近所の家に居つくようになるでしょう。

猫を飼う気がなくなった場合、猫が病気になったり子供を産んだ場合には、飼い主が猫の世話を放棄することもあります。このように放棄された猫や、引っ越して出て行った家に置き去りにされた猫を、捨て猫と呼びます。故意に猫や犬を捨てることは、多くの国で違法と定められています。

このような捨て猫は、別の人に拾われなければ、飼い主がいない猫集団を構成することになり、食べ物を盗んだり、子猫を生み続けたりといった被害を出すようにもなるでしょう。病気になっても治療を受けられず、餓死する場合もあるでしょう。路上に病気の猫がたむろしているような光景を見ると、猫の保護運動をしなければいけないという気を起こさせます。

飼い主がいない猫とは、以前は飼い猫であったものが、迷って家に帰れなくなったり、家出をしたり、捨てられたりした猫のことです。飼い主が死亡したり病気になったりしたのに猫の面倒を見る人がいないようなときには、故意に捨てたのではないのに飼い主がいない猫になる場合もあります。

このような飼い主がいない猫への対処の仕方については、「第2章―飼い主を失った猫の対策」で扱います。

家に寄りつかなくなった猫が人に慣れていない猫の場合には、人が差し伸べる支援を拒絶することもあります。ねぐらがあり、餌がふんだんにあれば、自由に生きることを好むでしょう。

暖かい地方ならば、きちんとした寝床は必要なく、小動物を捕らえたり、人の家やゴミ箱、レストランが出すゴミなどをあさったりして生活できます。飼い猫でなくても、人の生活と関わりながら生きていくことができます。

野良猫に餌を与える人は、飼い主としての自覚がなく、餌をやる以外のことはしようとしません。そうすると、猫は増え続け、やがてその地域では維持できない数に達します(許容範囲とは、限られた地域内で、十分なねぐらや餌を確保できる猫の最大数を指します)。このような状況下で生まれた子猫は、病気で死ぬことが多くなります。人が干渉しなければ、猫の数を制限する要因は、餓死、病気、事故ということになります。

繁殖数を制限する方法の一つは、子猫のうちに獣医や動物保護施設に連れて行き、里親を見つけるか、安楽死させるかというものです。

気候が寒い地域の野良猫は、定期的に餌を貰わなければ、めったに生き延びることはできません。野良猫の一群が存在する場合には、ほぼ間違いなく、定期的に餌をやりに来る人がいます。

野良猫が野性の動物のような行動をとる場合は、野生化した猫と呼びます。自由に生活している猫は臆病で、人が捕まえようとしても近寄れず、攻撃的な行動をとります。このような自由生活の境遇で生まれた子猫は、離乳前の早い時期につかまえなければ、人に慣れることは難しくなります。

人との接触を避けて生きている野生化した猫をつかまえるときは、人に慣れた野良猫をつかまえるときとは異なる手段で、慎重にする必要があります。

飼い主のいない猫に里親が見つかることもありますが、捨て猫をなくす対策として最も効果的なのは、外科的な避妊去勢手術により出産数を減らすことです。

避妊去勢手術は、まずは、飼い猫に施すよう運動を進めていくのがよいでしょう。飼い猫は世話が行き届いているため、産む子猫の数も多いものです。猫を飼っている市民や獣医が避妊去勢手術の必要性と重要性に気付けば、野良猫や自由生活をする猫にも避妊去勢手術を施すという考え方は受け入れられやすくなります。

避妊去勢手術は、子猫の数を減らすという効果の他にも、利点があります。


雌猫

卵巣を摘出して避妊した雌猫は、発情期が来なくなるので、雄猫を呼び寄せることもありません。このため、子宮や卵巣の感染症や腫瘍にかかる危険性がなくなり、乳房腫瘍の危険性も大きく減少します。


雄猫

精巣を除去して去勢した雄猫は、おとなしく、性格が穏やかになります。雄猫特有の強い尿の匂いもなくなり、尿をひっかけて回る頻度も減ります。放浪する範囲も狭まるため、交通事故に会う危険も減ります。他の雄猫とのけんかも少なくなり、咬み傷から伝染性の病気に感染したり膿瘍を作ったりすることも少なくなります。避妊去勢手術はいつ実施しても構いませんが、若い方が良いでしょう。ヨーロッパでは、性的に成熟した時か、その直前に実施するのが一般的です。ちょうど生後5、6ヶ月の時期に当ります。

年数が経ってから雄猫の精巣の除去をしても、性的習慣をすべてなくすことはできませんが、ひどい尿の匂いはなくなります。雌猫も、年数が経ってから避妊した場合は、それまでの生活習慣は、ほとんど変わりません。

雌猫は避妊する前に授乳をさせるべきだという考え方を裏づける科学的根拠は全くありません。それどころか、避妊前に発情期を迎えたり、授乳を行なった猫は、高齢になってから乳癌にかかる危険が増します。

生後8週目からの早期の避妊去勢は、現在では効果のある処置として容認されています。これにより、避妊去勢ずみの子猫を動物保護施設から引き取ることができるようになります。生後6週から14週の子猫の外科的な避妊去勢方法については、1993年のJournal of the American Veterinary Medical Assoc という雑誌に載っているAronsohn and Fragellaの論文(202巻:53-55ページ)と、1993年のJAVMA に載っているTheronの論文(202巻:914-917ページ)をご参照ください。

しかし、避妊去勢を行なう年齢については、獣医の間でも見解が分かれるところです。詳しくは、付録1のヨーロッパコンパニオンアニマル獣医師会連合(FECAVA)による「避妊去勢についての指針」(1998年11月)をご覧下さい。

猫の数を制限するに当たっては、早期の避妊去勢は明らかに、利点があると考えられます。

去勢手術の方法、その際の猫の扱い方の重要事項については、WSPAパンフレット「早期の避妊去勢 ― 外科的見解」をご覧ください。


(パンフレット1ページ目の翻訳)

早期の避妊去勢

早期の避妊去勢 - 猫についての(一部犬についての)外科的考察

避妊去勢は、最も古くから家畜動物に行なわれてきた外科的処置の一つですが、猫の避妊去勢を実施する適齢期については、科学的な調査はほとんどされていません。イギリスでは、昔から、生後6、7ヶ月になると避妊去勢を行なってきましたが、多くの雌猫は(特に野良猫の場合は)、この時期以前に妊娠します。獣医は、若い猫の避妊手術についての麻酔方法や手術手順を学生時代に教わりますが、これに従うのが楽だからという理由から、猫は6ヶ月を過ぎてから避妊するものだという、客観的な科学的根拠に乏しい固定観念が生まれました。これよりも早いほうが良いという獣医学的な研究結果が発表されてこなかったので、避妊去勢の時期については、獣医がそれぞれに判断してきました。

早期の避妊去勢は、繁殖年齢に達する前に不妊処置をすることです。発情期が始まる時期は、雌では4ヶ月から21ヶ月、雄は8ヶ月から10ヶ月と、猫によってまちまちです。発情期が始まる時期に影響するのは、生まれた季節、生活環境、成長が早いか遅いか、栄養状態、感染症にかかっているかどうかなどの要因です。交尾活動が活発な雌猫や雄猫が多い環境で育った雌猫や、晩春から夏にかけて生まれた雌猫は、発情期が早くなります。雌の野良猫は多くが早熟で、生後4ヶ月から5ヶ月で発情期を迎えます。そしてその後、発情期は年に3回おとずれます。

本論文では、早期の避妊去勢についての獣医学的な考え方を説明します。世界中で野良猫の繁殖対策にたずさわるWSPA所属の獣医の経験によれば、健康な子猫に腕のよい獣医が外科的処置を施し、麻酔の前後の状態を適切に管理できるなら、早期に行なう手術はなんら問題がないといいます。猫によって呼吸反応、循環器生理、薬物代謝、体温調整などが異なるので、この点については、注意深く様子をみながら行ないます。手術を行なう際には、健康な子猫であることを確認し、低体温、低血糖、失血を起こさないように、特に気をつけます。

野良猫に避妊去勢手術を行う場合は、必ずしも衛生的な環境で行なえるわけではありませんが、衛生条件が完璧でなくても、獣医は手術を行なえるようでなければいけません。子猫は弱々しくみえますが、成長した猫よりも回復がはるかにはやく、簡単で適切な手順さえ踏めば、処置はずっと楽です。手術時の獣医の緊張も少なくてすみ、回復も早いです。最新の麻酔の手法を用いれば、生後7週から12週の子猫でも、通常は安全な手術と言えます。麻酔の回復期には子猫を暖めてやりますが、驚くほど早く覚醒します(通常は30分から90分で、何事もなかったかのように覚醒します)。子猫でも、成長した猫と同じ手術手順で行ないます。臓器を識別するのは容易で、脂肪もありません。このため、手術時間は短くてすみ、腹腔内の見通しが よく、麻酔からの回復が早く、猫にとっての苦痛も少なくてすみます。

早期の避妊去勢手術を経験した獣医は、生後7ヶ月の猫の手術よりも、生後7週間の猫の手術の方が、はるかに簡単だと言っています。卵巣除去は生後6、7ヶ月の猫よりも、生後6,7週間の猫のほうが、腹腔への到達を妨げる皮下脂肪が少ないため、手術時間が短く簡単に............(次のページへ続く)

WSPAは、獣医を目指す学生のために、犬や猫の避妊去勢手術の詳細な手順をわかりやすく解説したビデオを用意しています。このビデオでは、早期の避妊去勢手術についても触れられています。

よくある質問

雌猫を不妊にする方法としては卵巣摘出があり、雄猫の場合は精管切除と睾丸摘出の2種類がありますが、精管切除はあまり行なわれません。ここでは、これらの避妊去勢手術について説明します。

動物の避妊去勢を好まない人たちもいます。以下に挙げるのは、そういった人が発する質問です。

去勢は自然の摂理に反するのではありませんか?

飼い猫が生活するのは、自然環境ではなく、人工的な人の生活空間です。飼い主が、捕食者、病気、飢えなどから守ってくれます。だから、猫という種が生存していくために、必要以上の子孫を残す必要はありません。

動物には、旺盛な繁殖欲があります。発情期の雌猫や、発情期の雌猫を見分けられる雄猫は、交尾相手を見つけられない環境に置かれると、ひどい欲求不満に陥ります。去勢手術を施せば、このような欲求不満に陥らなくなります。

避妊去勢手術は危険ではありませんか?

麻酔技術はとても進歩しており、手術の際に動物を麻酔することによる危険はほとんどありません。 雄猫の手術はとても簡単で、合併症を起こすこともほとんどありません。雌猫の手術は、切開する範囲が雄より大きいので、それなりの技術がなければ、手術後に痛みを伴わず早く回復させることはできません。

猫の習性が変わったり、太ったりしませんか?

避妊去勢手術を受けた猫は、一般に、おとなしく人なつこくなります。体重増加に大きく関係するのは食事量と運動量ですから、手術後に猫があまり活動的でなくなった場合は、餌の量を減らします。

雌猫に使える避妊ピルはないのですか?

雌猫は、プロゲステロンを注射したりピルを投与することで、発情期がくるのを防ぐことができます。この方法は、短期的な効果は発揮しますが、長期的な避妊方法としては勧められません。長期に服用すると、乳癌などの好ましくない副作用が現れることがあります。野良猫の場合には、餌に薬を混入して食べさせるのは難しいですし、避妊させたい猫がピルを服用したかを確認するのも困難です。

何歳で手術すればいいの?

かかりつけの獣医に相談してください。

雄猫の睾丸摘出手術は比較的費用が少なくてすみ、たいていの飼い主にも負担にならない金額ですが、雌猫の卵巣摘出手術は、手術に時間がかかるため、費用がかさみます。獣医に費用を払うのをいやがる飼い主も出てくるかもしれません。

手術費に対する考え方が動物保護団体と地元の獣医で食い違い、避妊去勢を推し進めるのが難しい例も過去にはありました。これは、なんらかの妥協点を見出していかなければならない問題です。

手術には報奨金を出したり、獣医には動物福祉に反さない範囲で手術にかかる経費を減らす努力を要請して、避妊去勢を推し進めていく方策を探らなければなりません。

動物保護団体や地方自治体の中には、避妊去勢手術を支援する事業を展開しているところもあります。このような事業は、さまざまな利用の仕方があります。成功例をいくつかご紹介しましょう。

1)手術代の無料券

避妊去勢を推進する団体が、失業している、あるいは年金生活をしているような飼い主に対して、手術代の無料券を発行します。猫を飼っている人は、無料券を持って、団体の活動に協力している獣医をたずねます。獣医は、猫に避妊去勢手術を施し、飼い主からもらった無料券を、発行している団体あるいは自治体に送り、手術代の支払を受けます。

このような券が、手術代の一部しか援助しない割引券の場合もあり、この場合には、飼い主が、それを超えた分を負担します。

避妊去勢手術に対して上記のような支援をしている地域や自治体では、飼い猫が産む子猫の数が減るにつれて、地域全体の野良猫の数が減るという目に見える効果があがります。この方法は、捨てられた野良猫を捕獲して殺処分にするよりも、費用効果が高く、人道的なものです。

無料券、割引券を利用する方法は、避妊去勢手術をするための専用施設の建設費用が必要ないという大きな利点があり、地域の獣医も恩恵を受けられるというおまけもつきます。この種の計画は、長期にわたってよい成績を収める傾向が高いようです。

2)避妊去勢を行なう病院

避妊去勢は、一般の動物病院が通常の診察時間外に行なってもいいですし、避妊去勢専門の施設を開設してもいいでしょう。このように避妊去勢手術を特定の場所に集中させれば、必要な経費が少なくてすみ、手術費を安く抑えることができます。アメリカ合衆国では、このような体制が普及しており、避妊去勢にかかる費用がかなり安くなりました。

避妊去勢手術は、通常は営利的な運営がされていますが、動物保護団体や自治体と連携して運営することもできます。たとえばアメリカ合衆国では、避妊去勢専用の公共施設を、動物繁殖対策の一環として地域が運営しているところもあります。このような施設は、開設時には自治体の補助(個人による支援の場合もある)を受けていても、相応の猫の避妊去勢手術の実績があがってくると、採算が取れるようになります。

獣医も、このような避妊去勢事業に協力すれば一般市民の認知度もあがり、新たな顧客を獲得できることに気付くでしょう。

新たに避妊去勢専門の施設を造ることは、地元の獣医を疎んじることにもなりかねないため、できれば協力体制を築くようにしてください。

3)獣医チームの海外訪問

避妊去勢についての考え方が未熟な国や、手術の技術水準が低い国を、避妊去勢手術の技術を有する獣医が交代で訪問する活動を行なっている組織もあります。しっかりした計画に基づいての訪問であれば、このような獣医が来てくれることは、地元の猫の保護団体には大きな助けになります。なかでも、リゾートホテルに居ついてホテルの経営者から厄介者扱いを受けている猫の避妊去勢を目的とした計画が、最も大きな成功を収めています。ホテル利用者は、このような野良猫に同情する場合が多いので、適切な避妊去勢計画を実施すれば、みんなが安心します。

たとえこのような獣医に来てもらっても、地元の獣医に避妊去勢手術の技術を部分的に指導してもらうにとどめるのが理想的です。国によっては、その国の獣医士の資格を持っていないと、獣医師会や関係行政当局の許可をもらわなければ、獣医師としての活動ができない場合もあることを忘れないようにしてください。


あなたの犬がimbreedされているかどうかを確認する方法

訪問した獣医が帰国したあとも避妊去勢計画の成果をあげ続けるためには、長期的視野に立った計画を立てることが肝要です。猫はとても速く繁殖するからです。1ヶ月かけて一定の区域の繁殖をうまく抑えこんでも、その区域外から数匹の雌猫が移り住むだけで、猫の数はまた増えていきます。長期的な計画では、獣医が定期的にその国を訪れるという方法もありえますが、その国の獣医に計画を引き継いでもらうのが一番いいでしょう。

避妊去勢計画の準備段階での検討事項:
  • 避妊去勢をしなければならない猫を飼っている人や世話をしている人に、なぜ避妊去勢をするかという趣旨を理解し、その趣旨に同意してもらわなければいけません。これは、活動を進めていく人たちが啓発、推進していかなければならない場合が多いでしょう。
  • 地元の獣医との協力を進め、獣医にも活動の詳細を知らせるようにします。獣医師会にも、活動の詳細を知らせ、支援をあおぎます。
  • 海外の国を訪問する獣医は、その土地の現状と習慣を把握し、必要に応じて活動の進め方を修正します。肝心な点は、地元の獣医にやる気を起こさせ、訪問後にも活動が続けられるよう、情報や技術を提供することです。

人に慣れていて、飼いやすい猫ならば、動物保護団体や自治体の収容施設に連れて行く前に、友達や近所の人に引取ってもらうのがいいでしょう。

動物保護団体や自治体へ連れてこられるのは、おなかをすかせていたり、ケガや病気をしていたり、あるいは、飼われている様子がなくて見慣れない猫であるといった理由からです。

動物保護団体の通常の保護手順は、

  • 猫の飼い主を探す。
    猫が何らかの標識を装着していると容易です。
    (第四章の、標識装着の方法をご覧ください。)
  • 個人あるいは猫の保護施設などで、一時的に猫を預かる。
  • 猫に新しい飼い主をさがして、引き取ってもらう。
  • 特別な理由がある場合には、猫が死ぬまで面倒を見る施設に収容する。

飼い猫がいなくなってしまった人や、新たに猫を飼いたいと希望している人には、猫の飼い方についての注意事項を知らせ、ペットの世話の仕方や飼い主になることで発生する責任について解説した啓発用のパンフレットなどを渡します。具体的な内容については、「第4章 法整備と啓発」をご覧下さい。

動物保護施設に収容した猫は、飼い主が探しにくるまでの日数を勘案して、最終的な処分を決めるまで(新しい飼い主をさがしたり、安楽死させる前に)、一定期間飼育しなければなりません。

このような最低限の保護期間は、法律で決められている場合もあります。もしそのような規定がない場合は、実際に保護や飼育をしている団体が独自に決める必要がでてくるでしょう。

このような最低限の保護期間のあいだは、保護されている猫に対する責任は行政(普通は地方自治体)が負うとしている国はたくさんあり、動物保護団体に有料で猫を収容してくれるよう委託することもあります。この保護期間が終わると、猫に対する責任や飼育に伴う経費は、動物保護団体が負担することになります。

猫の一時預かりは、猫の元の飼い主を探しているあいだや、新しい飼い主を探すあいだ、一時的に猫の世話を引き受けることを希望する人が行ないます。えさ代や獣医の診察費用は、動物保護団体が委託先の一時預かりをしてくれる人に支払う必要があるでしょう。

一時預かり制度は、実際に野良猫を保護したいけれども収容施設を建設する資本やノウハウを持たない団体にとっては、有効な選択肢になります。組織・運営が順調ならば、野良猫の里親探しにとっては、収容施設よりも効果的な方法となります。というのは、一時預かりならば、猫は人の居住環境で生活することができ、無味乾燥な施設で生活する必要がありません。

一時預かり制度を成功させる要点は:

●運営を集中管理すること

猫を一時的に受け入れてくれる人と、野良猫を保護する警察や他の機関を結びつけて、猫の受け渡しが滞りなく行なわれるようにする接点が必要です。

●一時預かりをしてくれる人の把握

猫を一時的に預かることを了承する人の居住環境が猫の飼育に適しているかどうかを調べたり、その家庭で無理なく世話をできる猫の数を把握する必要があります。 一家庭で受け入れられる猫の数は、多くて3匹から4匹です。これは、ある程度は、その家庭の部屋数で決まってきます。新しく受け入れる猫や、病気の兆候が見られる猫の場合は、他の猫とは別個の部屋を用意しなければならないからです。寄生虫の駆除や病気の治療が完全に終わった猫でなければ、他の猫と同じ部屋で飼うことができません。 また、去勢されていない雄猫は、雌猫と同じ部屋に入れてはいけません。一時預かりの期間中に、去勢手術の手配をするのも良いでしょう。 避妊去勢処置が施されていない猫は、屋外に出してはいけません。 一時預かりの家庭で世話をされていても、猫の所有権は委託した機関にあります。委託する機関と一時預かりをする個人の間で交わされる契約書には、この点を明記します。

●記録の管理

動物を保護する関係機関の管理下におかれた猫には、個別に写真入りの登録カードを用意します。生育暦が明らかな場合には、それも記録します。また、一時預かりをする人の詳細や、一時預かり期間中の観察経過、獣医が施した処置についても記載します。

●獣医の協力

一時預かりしてもらう猫をどのような基準で選別するかは、動物保護団体が獣医に相談するのが理想的です。獣医の検査をせずに一時預かりをしてくれる家庭に引き渡すのは好ましくありません。 このような獣医の検査を受ける際に、予防接種や寄生虫駆除、ノミなどの外部寄生虫の駆除もしておくとよいでしょう。

猫の健康状態に問題がなく、元の飼い主がその猫を飼う気がないということになれば、新しい飼い主を探します。この際、新しい飼い主に引き渡される前に、避妊去勢処置をしておかなければなりません。

新しい飼い主は、市民から広く募集します。猫の里親を探していることに市民が関心を持つように、里親探しは積極的に宣伝しなければなりません。たとえば、里親を必要としている猫の写真を、地元の新聞に載せるのもよいでしょう。

里親は、長期にわたって猫の世話をしていく責任を認識しているかどうかという観点から慎重に選びます。里親に適した人とは、猫を飼うのに十分な広さの居住空間を有していて、猫の世話をする時間と意欲のある人です。可能ならば、あらかじめ、里親になる人の家を訪ねます。調べに行く人は、猫を引き取る理由が不当なものでないかを見極め、衝動的に猫を飼おうとしているのではないことを確認する必要があります。

里親になる人には、好みの猫を選べるような場を設定します。これは、猫が保護収容施設にいる場合は簡単ですが、一般家庭で一時的に預かってもらっている場合には、まずは写真を見せるところから始める必要があります。実際に猫を見て回るのは、その後になります。

別の方法としては、里親希望者と里親を探している猫を一堂に集めて引き合わせることもできます。公民館のような広い部屋や、夏ならば公園のような場所で、決められた曜日に開催します。

新しい飼い主として猫を引き取る人の家が、猫が保護された場所に近いのは好ましくありません。土地勘がある猫ならば、元の飼い主のところへ戻ろうとするかもしれません。

新しい猫の飼い主が適切な世話をしない場合には、関係機関が猫を再度保護できるよう、新しい飼い主には同意書に署名しておいてもらいます。新しい飼い主に引き取られたあと、少なくとも1回はその家庭を訪問して、追跡調査をします。

猫の収容施設は、専用のものを建設して運営に当たる職員を雇用できる資金的余裕が動物保護団体にあれば、猫を保護したり治療したりする必要が生じたときに収容する場所として重宝します。この際、必要な資金を集められるか、その施設の明確な使用目的については、あらかじめ十分に検討する必要があります。

このような施設の基本方針、かかる費用、設計と運営、職員の選び方や資金の集め方については、WSPAが発行する「動物収容施設の設計と運営(1992年刊)」や、関連団体が発行する資料を参考にしてください。 

このような施設には、いくつか呼び方があります。内容によって、以下のようなものが考えられます。

動物避難所:猫が虐待や世話の放棄といった残酷な行為を受けた場合に収容される場所です。このような場所は、動物保護に関する法整備をする過程で必要になってきます。

動物治療センター:飼い主がわからない猫や、飼い主が治療費が払えない場合に、獣医による治療、救急処置、看護設備を提供する場所です。通常の治療は補助金を出して一般の開業獣医に担当してもらい、救急処置と看護だけをこのようなセンターで行なうという方法もあります。

動物ホーム:世話や復帰訓練を必要としている猫が、別の場所で飼われるようになるまでの間、短期間収容される場所です。一時預かり家庭も、このような収容施設の一種です。

動物サンクチュアリ:長期間の滞在が出来る場所です。保護した猫を長期間、あるいは死ぬまで飼っておくために必要な高額な費用をまかなうために資金を集めている団体もあります。このような施設では、過密や不衛生にならないようにするために、また高齢な猫や慢性病の猫の割合が増えてくるのを防ぐために、収容する猫の数を厳しく制限し、病気が広がらないような厳密な管理が必要になります。

里親斡旋センター:飼い主がいない猫に新しい飼い主を探すことを専門に行なう施設です。

ほとんどの施設が、以上のような機能をいくつか併せ持っています。

WSPAは、猫の収容施設は原則的に、猫のついの住家としてではなく、一定期間だけ収容される里親斡旋センターとして機能すべきだと考えています。

保護された猫のすべてに新しい飼い主をみつけることができない場合もあります。このような時には、その団体が、職務の優先順位を考えて対策を決めます。質の高い生活環境を長期にわたって提供するための費用がないときには、新しい飼い主がみつかる可能性の低い猫から安楽死させることを考えます。安楽死については、3章22ページの「安楽死」の項を参照してください。

猫の施設で最低限必要な物は、檻やケージ、あるいは猫にとっては安全・快適で、風雨よけがあり、換気や温度管理ができる、衛生的な囲われた空間です。

猫は、犬と別に飼育します。また、離乳した子猫も親猫と離します。去勢していない雄猫は、雌猫とは別にします。予防接種を受けていない猫や、獣医による治療が必要な猫は、個別の檻に入れます。最低限の保護期間がまだ終わっていない猫は、里親を探す猫とは分けて飼います。子猫は、乳離れするまでは親猫と一緒にします。

保護段階に応じて、飼育する場所を変更していっても問題ありません。

個別飼育の利点

  • 病気蔓延を防ぐことができる
  • 猫同士のけんかやいじめがおこらない
  • 個体識別が容易になる。

猫を個別に入れる檻の大きさは、最低でも16平方フィート(1.5平方メートル)あり、布や新聞紙を敷いた寝床用の箱と、おがくず、砂、その他吸水性のものを入れたトレイを設置します。

できるだけ早い時期に、動き回れる空間が多い場所に移します。多くの動物保護団体が採用する設計には、屋内に寝床があり、跳ね上げ式扉から運動スペースに出られ、そこには爪とぎ用の杭と、物見台があります。屋外の床は、表面は防水性の滑らかなセメントにし、外縁の排水溝へ向けて傾斜をとります。

猫を絶対に逃がさないために、檻の外側には安全な閉じた空間を設けます。建物内の扉は、手を離せば閉まる構造のものにします。

集団飼育する利点

  • 運動する空間をたくさん確保できる。
  • 猫同士でじゃれあう機会が増え、社会性がつく。
  • 見学者に、複数の猫が一緒に遊ぶところを見せることができる。

空いた空間は、棚、のぼり棒、物見台などを作ると有効に利用できます。猫には、その猫専用の寝床を用意します。一緒に飼う猫の数が少ない方が、猫にとってもよいようです。4,5匹が適当ですが、それだけ少なくても他の猫との折り合いが悪い場合は、個別飼育の檻に移します。

集団飼育する場合は、必ず避妊去勢手術を済ませておき、健康面の問題もないことを獣医に確認します。

収容施設への受け入れ

収容施設を運営する機関は、猫を受け入れる手順をはっきりと決めておきます。そうすれば、担当職員が、受け入れ時の記録に必要な情報を漏らさず入手することができ、必要事項を、同意書や、個体ごとの識別書類に記入できます。このような記録用紙の見本は、WSPAで入手できます。

このような受け入れ手順には、施設の獣医が作成したチェックリストに沿って行なわれる猫の身体検査も含まれています。受け入れ機関が定めた方針に従って、予防接種、寄生虫駆除、血液検査、隔離観察を行ないます。

日常の世話

日常の世話の仕方や餌やりの手順は、誰が担当しても効果的に、また同じように行なえるよう、詳細に決めておく必要があります。見学者が猫を見るときには、檻が清潔になっており、猫が興奮していないような世話の手順を組み立てます。見学者が見るのを好まない獣医による診察や安楽死は、できるだけ見学時間外に行ないます。

保護収容施設の設計や運用方法についての詳細は、WSPAやその関連団体にお聞きください。

猫用品の販売業者

 Animal Care & Equipment Services Inc. PO Box 3275-340 Highway 138, Crestline, California 92325, USA. Tel.+1(909)338 1791 Fax.+1(909)338 2799 e-mail.aces@gte.net  web.  MDC Exports Ltd Unit 11, Titan Court, Laporte Way, Luton,Bedfordshire,LU4 8EF,UK Tel.+44(0)1582 655600 Fax.+44(0)1582 613013 

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飼い主を頼らず気ままに生活している野良猫がいても、数が少なければあまり気になりませんし、ネズミを駆除してくれるという理由から歓迎される場合もあるでしょう。公園、病院、ホテルの敷地のような場所にいるなら、かわいがってもらえることもあります。しかし、野良猫を放置して数が増えてくると、そうも言っていられません。

どのような問題が起きるか

  • 野良猫が集中する場所ができる
  • 病気の猫や瀕死の猫が増える
  • 鳴き声やケンカの声がうるさい
  • 雄猫の尿の悪臭
  • 庭に穴を掘って排泄をする
  • 生ゴミをあさる
  • 野生動物を殺す
  • 飼い猫や人にケガを負わせる危険性がある
  • ノミが蔓延する

野良猫は、餌があり、ねぐらがあるところなら増え続けるものです。繁殖対策や住んでいる環境の整備をしなければいけません。都市部の野良猫の密度は、猫がありつける人間の残飯の量によって決まるといってもよいでしょう。ネズミや鳥を狩る農村部の野良猫は、はるかに低い密度になります。

健康な野良猫の集団が居続けるということは、定期的に餌をやる人が一人あるいは複数いるとみてほぼ間違いありません。野良猫が居ついている土地や建物の所有者あるいは自治体が、野良猫の存在に否定的であることがわかると、餌を隠れてやるようになり、本人は姿を見せないのに餌を入れる容器だけが後に残っているということになりかねません。野良猫の集団に対して人道的な対策をとるのが目的ならば、このように餌をやる人たちとの協力が大切になります。

1)避妊去勢手術を行ない、元の場所へ返す

このような対策として、数多くの動物保護団体や公共機関が人道的と認めている方法は、捕獲し、去勢もしくは避妊手術を行ない、手術済みである印として左耳上部を少し切断し、元の生活場所に戻して世話をしてもらうというものです。

野良猫の数を減らすためのこの方法は、1970年に初めてデンマークと英国で考案され、その他の国でも効果があることが認められてきました。(概略については、Journal of the American Veterinary Medical Associationという雑誌の208巻第4号520-523ページ、「イギリスの野良猫」Jenny Remfry著、1996年をご覧ください。)

扱う野良猫の数が多い場合は、迅速に作業をすることが重要になります。一部の雌猫に避妊手術を行なっている間に、繁殖力のある雌猫が、今まで以上に子猫を産むのを防ぐためです。

避妊去勢をすると、ケンカ、仲間を呼び合う鳴き声、尿をかけて回るといった問題が無くなります。そしてほとんどの猫は、年をとって死にます。子猫が産まれて増えることがありません。世話をしてくれる人になつくようになり、世話をする側もよろこびます。

避妊去勢処置がしてあることを示す印を猫につけると、人や保護団体に受け入れられ易くなります。このような印として国際的に認められているのは、左耳の先端を切り取るという方法です。

2)飼い猫にする

ほとんどの野良猫は野生化していて、家庭のペットには向きません。それでも中には餌をくれる人になついて、家庭で引き取れる猫もいます。野良猫に親近感を持ち、飼いならすことに喜びを覚える人は少なくありませんが、野良猫が屋内の環境になじむには、何ヶ月もかかることがあります。

野良猫が産んだ子猫を飼いならすのは難しくなく、とてもかわいいペットになります。ただ、幼いうちに捕獲して飼いならす必要があります。せいぜい、生後6週から8週の間でしょう。生後12週以降は難しくなります。

子猫を飼ってくれる家が見つからない時には、生後12週で捕獲し、避妊去勢手術をしてから、元居た場所に返すという方法もあります。妊娠している雌猫については、早めに捕獲して中絶する方がよい場合が数多くあります。

できるだけ早く新しい飼い主を見つけようとする猫の保護施設では、野良猫の受け入れを嫌がります。これは、しかたがないことです。

3)新しい生活環境

避妊去勢手術を施された野良猫が、農業や酪農を営む家庭に引き取られたときには、屋外で自由に動き回れる環境に置かれることもあります。

しかし、そこですでに猫が飼われていた場合、新参者は歓迎されず、おそらくケンカになるでしょう。そうすると、咬み傷やひっかき傷から病気を移したり移されたりする危険性が高まります。

母親から離された子猫は、注意深く見ておかないと、飢えや病気で死んでしまいます。

新しい場所に連れてこられた猫は、その場所の匂いや音に慣れ、餌をもらえる時間を覚えるまでの数日間は、檻に入れて飼うほうがよいでしょう。

4)収容施設

一般に野良猫は、狭い空間で生活することに適応しないので、通常の猫の収容施設が用意する環境は適していません。

野良猫が死ぬまで生活できる収容施設を用意することを考える場合には、建物の建設費、維持費、人件費がどれくらい必要かを良く考えなければなりません。

前述(16ページ「収容施設」)した程度の収容設備や職員の数に加えて、猫を収容した最初の数週間に使う特別な収容設備も必要で、長期にわたる餌代や獣医による診察費を計算しておくことも必要でしょう。

野良猫が施設に連れてこられた当初は、一匹だけ、あるいは同じ所から連れてこられた複数の猫と一緒の檻に入れて、2週間観察します。檻は天候による影響を受けない場所に置き、乾いた寝床があり、運動できる空間と、他の猫や人間の好奇の目から逃れられる隠れ場所を用意します。そして、逃げられないように、二重扉のある部屋におきます。万が一逃げたときのために、トラップ、捕獲網、捕獲棒などを用意しておきます。

猫が施設に収容された当初の数日間は、寝床には触れないようにし、掃除や餌やりも猫の生活に干渉しなくてすむように配慮します。

施設に収容される前に、できることなら避妊去勢はすませておきます。収容に当たって獣医の診察を受け、健康状態を確認します。血液検査や微生物培養検査は、その施設の方針に従って実施します。寄生虫やノミの駆除は、2週間の観察期間中に引き続き行なうとよいでしょう。

予防接種、寄生虫、ノミ等の予防対策、避妊去勢処置などは、猫が健康であることがはっきりしてから実施します。

個別経過観察後に、他の猫と一緒にして大きな檻で飼うことになったら、どの猫集団に入れるかは血液検査の結果をもとに決めます(たとえば猫白血病ウイルス陽性の集団)。檻は確実に施錠し、猫が逃げないよう、二重扉を設けます。


方法electusオウムを再現しない

5)野良猫が住みつく環境の整備

野良猫への対策が何もとられていない場所での猫の増殖率は、その場所の猫の収容能力あるいは環境容量で決まります。このような収容能力や環境容量は、食物やねぐらとなる場所をなくすことで減らすことができます。しかしこのような対策は、まずは、食物源が何なのか、ねぐらはどこにあるのか、といったことを調べることから始めなければならないので、時間も労力もかかります。道路を清掃してゴミ箱にふたをするだけで、簡単にすむ場合もありますが、ゴミの保管方法や出し方から変えていかなければならない場合もあります。猫が建物に入らないように、建物を修繕しなければならない場合もあります。

猫が住みつきにくい環境は、野良猫が餓死したり雨ざらしになるのを防ぐために、徐々に作り上げていかなければいけません。このとき同時に、少しずつ捕獲して安楽死させたり、避妊去勢処置を施したりします。

6)駆除

いったん野良猫が特定の場所に集団で居つくようになると、それを根絶するのは難しくなります。捕獲を逃れる猫は必ず何匹かおり、他の猫がいなくなった空間を埋めるように繁殖します。食物源やねぐらとなる空間をなくすことで、そこが野良猫にとって魅力のない場所にするための対策を講じなければ、他から新たな野良猫が移り住みます。

野良猫を根絶するのはたやすいことではありません。銃で撃っても、傷を負わせたり、無差別に猫を殺すことになり、なによりも、普通は市街地では禁止されています。毒殺は危険です。野良猫に食べさせようと置いておいた毒入りのものを、子供や他の動物や鳥が誤って食べてしまうこともありえます。また、毒殺は苦しむので、人道的とはいえません。

野良猫を根絶するためにとられる対策は、しばしば、地元住民や動物愛好家の反感を買います。根絶させるときには残虐な場面が展開されることが多く、ペットとして飼われている猫まで誤って殺してしまうことが多いからです。

7)集団の一部を安楽死させる

野良猫の数を減らすためには、一部の猫を安楽死させることが必要になることもあります。病気の猫、老齢の猫、ケガをしている猫が対象になります。これは、野良猫に餌をやって世話をしている人に、猫の居場所を教えてもらったり、トラップで捕獲したりといった作業の協力をしてもらって実現することが多いようです。こうして捕獲した猫を獣医へ連れて行って、安楽死させます。 

健康な猫を殺すことを嫌がる人は多いので、野良猫対策を実施する初期の段階で安楽死を実施するかどうかについての明確な方針を決めておかなければ、作業をする人々の間で軋轢が生じます。安楽死を実施する基準については、人々の同意が得られて実現可能な基準を、活動する団体に協力してくれる獣医と相談して作成します。この際に考慮すべき要素については、"獣医の役割"の項をご覧ください。

野良猫が、住みついている場所にはもはや居られず、代わりに放すの場所も見つからない場合は、安楽死させるのが一番よい方法でしょう。このような場合には、動物を殺さないことを方針に掲げている動物保護団体に処理を依頼するのは賢明とは言えません。そのような方針を持たない他の団体や自治体の責任で、猫を捕獲して獣医に連れて行き、安楽死させる手配をします。

推奨方法

WSPAが推奨する安楽死の方法は、バルビツール酸系麻酔剤を投与する方法です。投与すると意識を失い、十分量を与えると死に至ります。

バルビツール酸は、意識を朦朧とさせる薬剤で、多くの国では使用が制限されています。通常は、医療用として使われるだけで、医師や獣医の処方箋が必要です。

動物の安楽死に使用するには、ペントバルビトン・ナトリウム塩(ペントバルビツール)の20%溶液が便利です。猫がおとなしく、静脈を正確に確保できる助手がいれば、静脈投与します。

野良猫は扱うのが難しい場合が多いので、特殊な拘束器具を使用できる場合には、必ず使うようにします。好ましいのは拘束檻です。これは、檻の上面が上下に移動できる仕組みになっており、猫を檻の中で押さえつけることができます。押さえつけておいて、檻の外から腹腔内注射します。

最初に、クラーレ様の作用を示さないケタミンのような薬剤を筋肉注射して動けないようにしてから、バルビツール酸を、腹膜内、腎臓内、静脈内、あるいは心臓へ注射する方法もあります。

ペントバルビトン・ナトリウム塩の代わりにチオペントン(例:イントラバル)を投与しても良いでしょう。チオペントンは作用時間が短い麻酔薬で、高価ですが入手しやすい薬剤です。チオペントンは刺激性のある薬剤なので、意識のある猫に投与する場合は、静脈注射か腹腔内注射を行ないます。チオペントンで注意しなければいけないのは、明らかに致死量以上の用量を投与しても、猫が意識を回復する場合があることです。

死体の処理

死後硬直が起きたら、死亡したとみなします。薬剤注射により殺された猫の死体は、他の動物が食べないように、廃棄方法に気を配ります。

動物の死体の処理方法についての法的規制がある国もあります。

有害獣駆除を請け負う民間企業に猫の捕獲と殺処分を依頼する場合は、評判のいい企業を選ぶようにします。猫を捕獲して何キロか離れたところに捨ててきてもわからないため、野良猫の問題を別の自治体に転嫁することになります。請求書には獣医への支払いが含まれているかを確認し、費用を支払う前に、捕獲された猫を獣医で安楽死させた証拠を見せてもらいます。

「犬と猫の人道的な安楽死の方法」というパンフレットが、WSPAで入手可能です。

野良猫の実際の捕獲方法、扱い方、世話の仕方については、数多くの経験が蓄積されてきました。詳細については、このパンフレットに付属するWSPA製作の「猫の世話と繁殖対策」というビデオをご覧ください。

避妊去勢処置をして再び猫を放すという方法は、トラップによる野良猫の捕獲を得意とする猫の保護団体が採用することが多いようです。規模の大きな動物愛護団体の会員の中にも、野良猫に対する関心が高く、猫をトラップで捕獲するのがうまくなる人もいるようです。

野良猫の大きな集団を対象として、避妊去勢処置をした猫を再び放すという方法を実施する時には、関係者の間で綿密な連絡をとり、資金を確保し、実施後の経過を詳細に追跡する必要があります。

WSPAの関係団体からも、他にもビデオや情報をまとめた冊子を入手できます。

単独の野良猫や、集団が小さい場合は、猫に餌をやって世話をしている人の協力が得られれば、手順は簡単です。このような人たちが、経験を積んだ人たちの指示や助言を受け入れる用意があることが肝要です。

作業の段階は次のようになります:

  • 適切な道具の入手
  • トラップで捕獲
  • 猫の運搬
  • 獣医の診察
  • 耳の縁の切除
  • 長期にわたる経過観察

たとえ手袋をはめていても、猫を手で捕まえようとするのは勧められません。おびえた野良猫による引っかき傷や咬み傷は、傷の程度がひどいものです。

猫をつかまえる一番簡単な方法は、トラップを使った生け捕りです。ねこをおびき寄せて、傷を負わせることなく捕まえるための特殊なトラップがあります。このトラップで捕まえてから、搬送用のケージや、拘束ケージに移して運びます。

先に輪がついた捕獲棒は、ひらけた空間で野良猫を捕まえるのには勧められません。逃げられない閉じた場所でうまく使用しないと、猫を窒息死させてしまいます。

網は、猫を逃げられない場所に追い詰めておいて、すくい上げて捕獲するときに用います。網を支える輪は頑丈な素材のものを選び、網の直径は、それを支える輪の直径の倍のものを取り付けます。

網目の大きさは、猫の足が突き出ない程度のものにします。網を使った捕獲の問題点は、猫が網に絡まった時、パニックを引き起こす可能性があることです。

逃げられない狭い空間では、猫の捕獲ばさみが役に立ちます。猫の背後から静かに近づき、はさみ部の先で首をやさしく、しかし、しっかりとつかみます。そして、すぐに猫を拘束ケージや運搬ケージにそっと入れます。つかむときに猫が抵抗しても、すぐに疲れてしまうので何度でも試みます。通常は、抵抗しても数分後にはあきらめます。

毛布や大きなバスタオルも役に立ちます。飛びかかってくる心配のない猫や、もう疲れてしまっている猫の上からかぶせます。猫を安心させるために、トラップや運搬用のケージの上からかぶせて使うこともできます。

猫に直接手を触れなければならないときには、作業をする人は手袋をはめます。猫の牙が作業をする人の皮膚に達しないくらい厚い皮製のものを使います。

沈静剤は、経口投与しても効果が表れるまでに時間がかかり、捕獲する前に人の手の届かないところに隠れようとする場合が多いので、勧められません。

捕獲に必要な、基本的な道具は、

  • 手動開閉式トラップ
  • 自動開閉式トラップ
  • ドアの位置を移動できる拘束ケージ
  • 収容ケージ
 (写真の紹介) Catch Net: 捕獲用の網 Short Stay Pens: 短期収容のための檻 Cat Grabber: 猫の捕獲ばさみ Multi Cat Trap: 複数の猫をつかまえるためのトラップ Hospital Basket: 経過観察用の檻 Manual Trap: 手動開閉式のトラップ Automatic Trap: 自動開閉式トラップ Cat Trap; 猫用のトラップ Cat Carriers: 運搬用のケージ 

手動開閉式トラップ

手動開閉式のトラップは、通常、材木と金網で出来ているので、自分で作ることもできるでしょう。大きさは、猫の鼻先からシッポの先までの長さより長いほうがいいでしょう。底は板(猫はこの方を好む)か、金網(持ち運ぶのに軽くて便利)にします。入り口は、猫が入りやすいように大きく開き、簡単に確実に閉められる構造にします。入り口に長い紐かコードを取り付け、仕掛けた人が強く引いて閉じます。

手動開閉式トラップの使い方


手動開閉式トラップは、餌をもらいにくる猫を捕獲するのに向いています。また、特定の猫を捕まえる必要がある時にも役立ちます。他の猫がトラップの中に入っても、また出ていくことができます。捕獲する人は、手動開閉式のトラップで実際に猫を捕まえる前に、入り口の閉じ具合に慣れておきます。

捕獲する人は、土地の所有者や、猫に餌をやっている人から、猫が餌を食べに来る場所や時間を確認しておきます。捕獲する日には猫が空腹でいるように、猫に餌をやっている人には、餌をやらないよう頼んでおきます。できれば、餌をやっている人には捕獲の現場に立ち会ってもらいます。猫が痛い目に会うわけではないことを見届けてもらい、野良猫対策に対する理解を得るためです。

トラップは、猫がいつも餌をもらっている場所の近くに、餌を入れて設置します。捕獲する人は、少し離れて立ちます。木や扉の後ろに隠れるように立つと良いでしょう。別の人が猫の動きを見ていて、入り口を閉めるかどうかの指示を出しますが、これは、経験を積んだ人がする必要があります。ふだん猫に餌をやっている人には、猫が餌をもらうときに慣れ親しんでいる呼び声や音を立ててもらいます。猫の注意を引くために餌を少しだけトラップの外に置いてもよいですが、大半はトラップの中に仕掛けます。 

餌をやっている人は、猫が一番好む食べ物を知っています。トマトソースに漬けたイワシのような臭いの強いものを好みますが、いつも食べている餌が一番いいでしょう。猫は、以前に捕獲されたことがなければ、怖がらずにトラップに入ります。


複数の猫を捕獲する場合には、一番問題となる猫(たとえば妊娠している猫)が入るまで待ちます。一度トラップに入り、餌を食べてから出て行った猫は、もう一度餌を食べに入ってくる場合が多いので、後で捕獲することができます。他の猫が捕まるのを見て用心深くなる猫もいますが、捕獲作業が淡々と静かに行なわれれば、他の猫の窮地に対しては実に無頓着なものです。

時によっては、猫が2匹同時に、あるいは雌猫と子猫が一緒にトラップに入ったりします。こういう場合には、入り口を閉め、捕獲した猫すべてを拘束ケージに移すのがよいでしょう。すでに避妊去勢されている猫は逃がします。

大事なことは、一匹あるいは複数の猫がトラップの奥に入って餌を食べ始めてから入り口を閉めることです。入り口の扉の上に乗っているときに閉めてはいけません。入り口を閉める時は、迷うことなく、すばやく行ないます。野良猫は驚くほど敏捷で、捕獲者に隙があれば、その隙を突いて逃げようとします。一度逃げられると、再びその猫を捕まえるのは難しくなるでしょう。トラップを操作する人は、注意を集中して猫を観察し、捕獲できると確信したときにだけ動きます。

捕獲した猫は、すぐに拘束ケージに移して、落ち着けるように布か古い毛布をかぶせるか、何かで覆って、移動させるまで静かな場所に置いておきます。

自動開閉式トラップ

自動開閉式トラップは、猫がペダルに重みをかけた時に仕掛けが作動し、入り口が閉まる仕組みになっています。普通は金属で作られていて、業者や専門店で購入できます。付録5の製品販売業者をご覧ください。

このトラップは、非常に臆病な猫や、餌場を不定期にしか訪れない猫、あるいは人が入って行きにくい場所に住みついている猫を捕獲するのに便利です。動物愛好家が見つけてトラップを開けてしまう心配のない場所(施錠した建物の中など)で使用するのがよいでしょう。猫を選んで捕獲する必要がない場合に有効です。猫がたくさんいて、できるだけたくさんを一回で捕獲しなければならない場所では、いくつか同時に設置してもかまいません。

トラップは高価な物なので盗まれることもあり、チェーンと南京錠で重いものにつないで設置するのが賢明でしょう。

自動開閉式トラップの使い方

猫を捕獲する前に、入り口の仕掛けが正確、円滑に動くかどうか試してみなければいけません。必要であれば油をさします。トラップは、いつも餌を食べに来る場所に置き、餌を入れて設置します。雨よけのためにビニールシートをかぶせてもよいでしょう。

猫がトラップにかかったら、できるだけ早くトラップから回収するために、定期的に調べに行くか、遠くから双眼鏡を使って調べます。捕獲した猫の身元確認には、注意が必要です。太っている猫や、首輪をしている猫、あるいは親しげな鳴き声をたてる猫は、遠出をしている飼い猫である可能性が高いと考えられます。このような猫は、飼い主の同意なしに避妊去勢するわけにはいきません。すでに避妊去勢してある野良猫は、左耳の先端が切れているのでわかります。

猫の運搬

捕まえた猫を獣医のもとへ運ぶときには、特別なケージに入れて運ばなければなりません。そのケージには、トラップから猫を移動させやすいように上下スライド式の入り口が一端にあり、獣医が猫に触れることなく注射できるように猫を拘束できる壁面があります。

この特殊なケージは、たいへん有用です。このケージのおかげで、獣医やその補佐をする人が、安全に野良猫を処置することができるようになりました。このため、野良猫の繁殖対策に進んで協力するようになった獣医もいます。

(右上写真)猫の拘束ケージ 注射の際には、猫を押さえつけて動けないようにします。

このタイプのケージでプラスチックのコーティングを施してある金網製のものは、押さえつけ用ケージ、あるいはトラップからの回収用拘束ケージとして、専門業者のカタログに載っています(付録5の製品販売業者を参照)。

猫の捕獲をする人は、猫をトラップからケージに移す操作を、猫を逃がすことなく確実に行なえるよう、飼い猫で練習します。大きな雄猫が運搬用のケージへ突進する時の力はすごいので、運搬用ケージが動かないように誰かに押さえてもらうか、壁にあてておく必要があります。運搬用ケージに移せたら、布か毛布でケージを覆うと、猫は落ち着きを取り戻すでしょう。

そうして、診察予約をとった上で獣医に連れて行きます。獣医には、猫が野良猫であること、また、いくらか餌を食べていることも伝えます。

野良猫にとって、ケージに入れられたままの状態は大きなストレスを与えることになるので、手術の前後に拘束する時間は、できるだけ短くします。

獣医が行なう処置については、前もって話し合って決めておきます。話し合う内容は、以下のようなことが多いでしょう。

診察:猫の意識がはっきりしている間に診察します。老齢、重篤な病気、大ケガをしていることがはっきりしている場合は、安楽死させます。避妊去勢手術を行なうのが適当だと判断されたら麻酔をして、性別、推定年齢、健康状態、ケガや病気の兆候がないかを調べます。

安楽死の基準:猫は、軽い病気やケガからは回復するものです。野良猫に餌をやって世話をしている人は、獣医が勧めるならば餌に薬を混ぜて与えたがるでしょう。捕獲した猫のうち、健康な猫だけをまた放すなら、どのような猫が健康であるかについて、十分に話し合って基準を決めておきます。また、誰の考えが一番尊重されるべきか(餌をやって世話をしている人かそれ以外の人か)も、はっきりさせておかなければいけません。

安楽死を選択するか、治療を行なうかの基準を考えるときに重要なのは:

  • ひどい苦痛を伴う、あるいは治療法のないケガや病気かどうか。
  • 他の猫や世話をしてくれる人間にも感染する病気を持っていないかどうか。
  • 治療できる病気やケガだけれども、治療費がかさんだり、実際の治療が難しくないか。
  • 簡単で安価な薬剤投与で治療できるケガや病気の兆候しか示していないか。
  • 明らかにケガや病気とわかる兆候は何も示していないか。
実際の線引きは、受け入れ施設があるかどうか、投与できる薬があるかどうか、かかる費用などのいくつもの要因によって決まります。しかし、大事なことは、これらの事柄を関係者のあいだで前もって話し合っておくことです。

予防接種国によっては、猫に狂犬病の予防接種を受けさせるよう獣医が要求しているところもあります。

若い猫には、その地域でよく見られるウイルス性疾患に対する予防接種を受けさせます。一般的なウイルス性の伝染病に対する予防接種が必要です。そのなかでも、猫汎白血病が一番危険である場合が多いでしょう。若くない猫は、たいてい免疫を持っているので、予防接種の必要はありません。


寄生虫:野良猫はすべて、回虫やサナダムシに寄生されていると考えたほうがよく、若い猫では、回虫が寄生していると、ひどく健康を害すると思われます。獣医に適当な錠剤を処方してもらい、錠剤を割って、餌に混ぜて与えます。

野良猫の中には、ノミや耳ダニを持っている猫もいます。猫を麻酔したときに、このような寄生を見つけたら、放す前に駆除します。

避妊去勢手術:獣医には、できるだけ早く猫を放すことができ、再び診察を受ける必要のない手術方法や材質を選んでもらうよう頼みます。雌猫の場合は、手術後に傷口が開いたとしてもそれほど重症にならない、わき腹からの切開を行なう獣医が多いでしょう。詳細は「レムフライ:イギリスの野良猫」(JAVMA、208巻、4号、520-523ページ、1996年)をご覧ください。

前述したように、避妊去勢手術を行なう時期や手法に関しては、獣医によって考え方が異なります。

猫の妊娠期間は、8~9週間です。7週目以降には捕獲するのをやめて、子猫が生まれるまで待ってその猫を探しに行くか、親子一緒に捕獲できるようになるまで待ちます。別の方法としては、妊娠している雌が子猫を産んで離乳するまで世話をするというものです。子猫が離乳したら、飼い主を探して飼い猫にします。

手術後の世話:手術後には猫を清潔なケージに移して、意識が戻るまで待ちます。雄猫は、たいてい12時間以内には完全に元気になって、もとの場所へ放すことができます。雌猫は、静かで暖かい場所に、一晩か、おそらくはもう少し長く、留めておかなければならないことが多いでしょう。その際に、水と食べ物も少し与えます。回復するのに2日以上必要な場合には、運搬用のケージから、もう少し大きくて動き回れるケージに移します。飼育檻や入院用のケージは、それが持ち運び出来るくらい小さいか、そこから再び運搬用ケージに簡単に猫を移せない限りは、決して猫をいれてはいけません。


馬の積極的な行動

耳の先切断の重要性

耳の先端の切断は、多くの国で、猫の集団の中でどの猫が避妊去勢をした猫かを見分けるもっとも簡単な方法として用いられています。このような識別は、避妊去勢処置がもたらす成果を把握し、同じ猫を2回手術しないためにも、また手術をしていない猫が新たに集団に紛れ込んでいないかを確認するためにも必要です。

野良猫が、単に飼い主からはぐれた猫と考えられ、新しい飼い主が見つからないために元の場所へ放すような場合は、耳の先端を切断します。その後飼い主が見つかっても、新しい飼い主は、この目立つ印を嫌がることは少ないようです。

切断の手順

イギリスや他の多くの国で採用されている方法は、左耳の先端を切断するというものです。こうすると、耳が切れているということが、20m離れた所からでもはっきりとわかります。

切断は、猫が麻酔から覚める前に獣医が行ないます。出血を最小限に抑え、傷を早く治すために、以下の方法が推奨されます。
  • 両方の外耳道を掃除します。猫が耳を掻いたりする原因となる汚れをきれいに落とします。
  • 左の耳たぶを掃除・消毒し、消毒薬などを取り除くために、完全に乾燥させます。消毒薬が残っていると、血が固まるのが遅くなります。
  • ボールペンで耳たぶの内側の、先から10mm(1cm)の所に、線を引きます。
  • この線に沿って、少し切れにくいハサミか、電気焼灼器を使って切ります。
  • 傷口を何か器具で挟み、傷口に止血薬や化膿止めを塗ります。適当な薬剤がない場合には、小麦粉でもかまいません。猫が麻酔から覚めて血圧が上昇したら、出血がないかを確認します。

今後の責任

野良猫は、誰かが責任を持って世話をしない限りは、もとの場所に放してはいけません。避妊去勢手術後に猫を放しても、餌を与えなければ、動物保護法で動物遺棄とみなす国は数多くあります。餌をやる人は、猫をよく観察し、何か問題があれば、猫の保護団体に報告します。複数の猫がいる場合は、それぞれについての記録をとり、経過を追跡すると同時に、新参の猫の記録もとります。

新しく来た猫が集団に加わるようであれば、捕獲し、避妊去勢を行ない、耳の先を切除します。

衛生面

猫は、人にも感染する微生物を保有しています。 たとえば、白癬、トキソプラズマなどです。人間に感染する危険性は、以下のような予防策を講じることで、大きく減らすことができます。

  • 猫をトラップで捕獲したり触ったりするときの服、手袋、靴などは、専用のものを用意し、これらのものは、人が調理や食事をする場所の近くには置きません。猫の体、猫の寝床、餌皿、トラップ、ケージなどを触った後は、しっかり手を洗います。特に調理や食事をする前には念入りに洗います。
  • 野良猫を扱う人は、破傷風の予防接種を受けておきます。
  • ここで推奨している捕獲方法ならば、猫に直接触る必要はないので、咬まれたり、引っかかれたりする危険性は少ないでしょう。しかし、どんな小さな傷でも、よく洗って消毒し、傷が深いようならば、広範囲の細菌に効く抗生物質を服用します。
  • 呼吸器感染症、猫汎白血病、白癬などの病気は、野良猫同志が触れ合うことで、あるいは人の手や服を介して伝染していきます。このため、野良猫の面倒をみる人は、自分の飼い猫とは別の空間で飼い、餌皿なども、飼い猫とは別にします。野良猫を世話した後は、必ず手を洗い、野良猫のいる部屋に専用のオーバーオールなどを常備しておくのも一案です。

猫の集会所

ホテルでの避妊去勢計画は、しばしばホテル利用客の関心を惹きます。人が食事をする場所から離れた場所に、ホテルの利用客が猫に餌をやる場所を設けておくのは、上手なやりかたです。野良猫専用の小屋や集会所を作り、そのようなものを作る意図を数ヶ国語で説明する表示を出してもいいでしょう。

このような対策を実施するための組織のメンバーには、動物保護団体の関係者、あるいは財政的支援をする自治体の職員が参加し、餌をやって世話をしている人たちのうち、少なくとも一人は参加するようにします。

また、そのような対策を実施する場所の所有者あるいは管理者にも、協力してもらうか、でなければ少なくとも暗黙の了解をとりつけます。資金援助がどのように行なわれているかについても知っておかなけれなりません。動物に対する各自の法的責任、土地の所有者や管理者に対する法的責任、作業をしてくれる人の事故防止について負う法的責任についても知っておきましょう。

実際の手順は、6段階に分けられます。

1)問題点の把握

  • 猫に餌を与えている人と、与えている場所を、すべて把握する。
  • 餌を与えている人の協力を得て、集まってくる猫の一覧を作成する。それには、外見の特徴、健康状態、妊娠しているか授乳中であるかなどを記載します。
  • たまにしか顔を出さない猫や、人懐こい猫を特定します。このような猫は、飼い猫である場合が多く、捕獲を始める前に、飼い主には注意をうながします。飼い主の同意なしに猫に避妊去勢処置を行なうことを違法としている国もあります。飼い猫も捕獲されて避妊去勢されるという危惧を住民が持つと、このような野良猫対策を中止させようとする飼い主も現れます。

最初の調査の段階で、猫に餌をやっている人たち同志で協力することはとても重要になってきます。猫は、複数の餌場で餌をもらっている場合が多いので、他にも餌をやっている人がいることを知らなければ、重複して数えられることになります。

2) 餌やり

  • 交代で決まった時間に餌をやれるよう、週末や休日も含めた日程を組みます。特定の時間になると餌がもらえるということを、猫はすぐに学習します。このようにしておくと、捕獲が容易になります。不規則な餌やりはやめましょう。
  • 餌を与える場所は、いつも清潔にします。食べ残しは片付け、餌皿は洗い、ハエを寄せ付けないように、また悪臭を放たないようにします。こうすると、新たに野良猫が寄り付くことも予防できます。きれいな水も与えます。

3) 作業計画を立てる

  • どの猫を残すか決めます。人懐っこい猫や子猫には飼い主を探します。老齢の猫、ケガや病気をしている猫は、安楽死させます。そうすると必然的に、避妊去勢をしたうえで残す猫が決まってきます。
  • 捕獲、運搬、獣医にかかる費用、餌代を計算します。トラップをリースで借りられない場合は、購入しなければなりません。

4)獣医の手配

  • 野良猫に対する理解があり、すすんで健康状態について教えてくれて、しかも良心的な費用で処置をしてくれる獣医を選びます。開業している獣医には、経済的な制約があることも忘れてはいけません。野良猫対策が長期的な目で見て成功するかどうかは、かかる経費をまかなえるかどうかにもかかってきます。
  • 使う器具についても話し合います。避妊去勢手術をする野良猫は、必ず、トラップか抑制ケージに入れて連れて行きます(原文25ページ参照)。
  • 避妊去勢手術以外にも、どんな処置が必要かを話し合います(原文28ページの「獣医の役割」を参照)。
  • 安楽死させる猫の基準を決めます。元の場所に放すのは健康な猫だけにするか、ある程度の不具合のある猫にも手術を施すかを決めます。
  • 野良猫ではない猫が捕獲されて手術のために獣医に連れてこられた場合にはどうするかを決めておきます。
  • 避妊去勢処置をした猫については、獣医の責任で左耳の先端を切除することを確認します(原文30ページ「耳の先端の切除」を参照)。
  • 手術後の世話について話し合います。手術後には、どのくらいの期間、猫を獣医のもとにおいて置くか、回復するまで置いておける場所があるか、元の場所に放すまで、どれくらいの期間をみておくのが良いかなどです。(原文28ページを参照)

5)捕獲

  • 捕獲が迅速に行なえるよう、十分な数のトラップを用意します。猫に避妊去勢処置をしているあいだに、子猫が以前より増えては意味がありません。捕獲を始めたときには自信を持ってトラップを扱えるよう、捕獲する人はトラップの使い方に習熟してください。
  • 輸送手段を確保します。まずは、捕獲の道具を現場へ運ばなければなりません。猫が捕まれば獣医まで運ばなければなりません。手術が終わったら、回復するまで置いておく場所に運び、そのあと、元の現場へ運ばなければなりません。

6)長期間にわたる猫の世話と監視

  • 猫の寝床を用意します。段ボール箱に新聞紙を敷いただけのものでもいいですが、場所によっては、雨よけの屋根がついた木製の小屋を作る必要があります。(「路地裏の猫たち」の冊子を参照)
  • 第1項で作成した猫の記録に、見つかった飼い主、避妊去勢処置の有無、生まれた猫、死んだ猫、新たに加わった野良猫を記入します。
  • 病気やケガをした猫は、治療するため、あるいは安楽死させるために、できれば再び捕獲します。

猫の数が多い集団のすべてに避妊去勢処置を施し、幸せな猫だけの安定した集団を作るには時間がかかりますが、それを達成した時の充実感は大きいでしょう。

獣医は、地元の動物病院を利用するのが理想的ですが、そのような施設が存在しないような開発が遅れた地域でも活動しなければならないこともあります。国によっては、移動動物病院があったり、テント式の移動病院で対処しています。そのような移動動物病院には、獣医が2人と、看護婦あるいは猫の捕獲の経験がある補佐役の人が2人いるのが理想的です。

必要な器具は:

  • 猫用のトラップ2個
  • 猫用の拘束ケージ4個
  • 回復用の檻12個
  • 檻や猫を区別するために貼り付けるテープとボールペン

手術用装備

  • 卵巣摘出手術用の器具
  • 手術消毒用の布、綿
  • 消毒した覆い布、縫合糸
  • 脱脂綿、包帯
  • 手術前に皮膚を洗浄する器具と消毒薬
  • 手術用手袋(可能であれば)
  • 清潔な毛布とタオル一式
  • 外科用メス
  • バリカンと予備の刃
  • 注射器と注射針
  • 手洗い用のブラシ
  • 使った器具を再滅菌するための設備

避妊去勢以外にも必要になる処置があると思われるので、これ以外にも外科的処置や歯の処置に必要な器具が必要になることもあるでしょう。

薬剤:

  • 麻酔薬
  • 予防接種ワクチン
  • 虫下し
  • 抗生物質
  • 耳や目の滴下薬
  • 安楽死用薬剤

市街地にいる猫の数を増やさないためには、捨て猫が野良猫の集団に加わらないようにすることが肝要です。そのために、猫の飼い主が責任を持って猫を飼い、世話をし、余分な子猫を産ませないようにすることが必要になります。

この理想的な状態に到達するための特別な近道はありません。多くの場合、飼い主は動物保護団体からの支援を必要とし、そのような団体を、実際的な法律や問題意識の高い自治体が支えます。状況を改善していく方向へ持っていくためには、子供にも大人にも、責任あるペットの飼い主となるための啓発を行なう必要があり、特に、望まれない子猫が生まれてこないようにするためには避妊去勢手術が重要であることを伝えていかなければなりません。

要約すると、猫の繁殖対策には、次の要素が欠かせないということになります。

  • 法の整備
  • 猫の個体識別
  • 避妊去勢処置
  • 市民の啓発

WSPAでは、動物に思いやりがある国ならどこでも、動物保護に関する法律があってしかるべきだと考えています。ペット動物は繊細な生き物なので、大事に世話をしてやり、苦痛を味わわなくてすむように保護してやるべきでしょう。 

国が家畜動物の保護に関する法律を整備するなら、そこには猫の保護も必ず含めます。特に、世話の放棄、虐待、捨て猫は違法とします。

しかし、猫と犬では、法律の網のかけ方が異なっているのが実情です。猫は、犬のようには飼い主の目が常に行き届くとは限らないためです。たとえば、犬が家畜に危害を与えた場合には飼い主が責任を負いますが、猫が家畜に危害を加えても、必ずしも飼い主が責任を負うとは限りません。また、車を運転している人が犬をはねると、器物破損として責任をとらされるでしょうが、猫をはねても責任をとらされるとは限りません。法律では、猫は、他の家畜動物と同じように「所有している」とはみなさないということです。 WSPAが発表した「動物保護法-指針と規定例」(1995年)を参考にしてください。

多くの国では、警察と動物保護に関わる市民団体が動物保護法を運用しています。

また、野良犬、野犬、野良猫が引き起こす被害は、地方自治体が処理にあたるとしている国が多く、この場合、動物保護団体と協力しています。自治体の条例は、狂犬病やそのほか動物が持っている病気などの公衆衛生の問題に対処するために作られますが、これゆえに、野良犬や野良猫を防止する対策を盛り込んだ規定が必要になります。

先進国の中には、このような動物対策が、単なる「野犬捕獲者」から、より高度な作業を行なう「動物対策職員」に改められるところもあります。動物対策職員は、自治体の職員として野良犬や野良猫を収容するだけでなく、野良犬や野良猫を生み出すようなペットの飼い主に、責任ある行動をとるよう促すこともします。このような動物捕獲員の仕事は、主に犬を対象としたものですが、猫や他の動物も対象にするように義務づけます。

動物対策職員の具体的な仕事内容については、WSPAが発行する「動物対策職員(行政当局や市町村を支えるための野良犬対策の技術)」を参考にしてください。これは、主に犬への対処の仕方を扱ったものですが、猫についても書かれています。

法律は、市民がその価値と重要性を認識してはじめて、有効に運用されるようになります。このためには、市民への啓発が必要になります。

猫や子猫の世話の仕方についての子供向けの案内は、本、雑誌、猫の愛護団体など、どこででも入手できます。

子供には、社会倫理を教える学校の授業の一環として動物の世話の仕方を教えることもできるでしょう。動物保護に関わる市民団体は、そのような教育プログラムを作成するために、教育委員会に進んで協力します。

子供の教育プログラムのための本を発行している市民団体もあります。WSPAにも見本を置いています。

環境保護や野生動物保護の活動をしている市民団体には、このような教育プラグらムに取り込めるような、子供が喜ぶ資料を提供してるところがたくさんあります。 大人が、動物の世話の仕方や動物保護問題について知りたいときには、本、雑誌、ラジオ、テレビを利用できます。動物福祉団体が発行している出版物は、会員ならば送ってもらえるでしょうし、猫の繁殖を手がける組織に配布したり、図書館、獣医、動物収容施設、警察などに置いてもらって、多くの人に読んでもらいます。

動物保護団体の出版物は、ペットの飼い主の責任を強調し、先のことを考えずに衝動的にペットを飼うことのないよう戒めます。

このような配布物の表題としては、次のようなものが考えられます。

  • 猫や子猫の世話の仕方
  • 猫と一緒に引越し
  • 猫と赤ん坊
  • 猫の寄生虫駆除
  • 猫がいなくなったらどうするか
  • 新たに猫を飼う
  • 猫に予防接種を受けさせる
  • 避妊去勢手術の利点

政府機関や、特に地元の公共団体ならば、予防接種、寄生虫駆除、避妊去勢手術といったペットの衛生福祉を推し進めることによって、一般市民の啓発を行なうことができます。地元の公共団体が避妊去勢キャンペーンを進めるための方法については、第2章の「飼い主を失った猫の対策」をご覧ください。

このような活動をしているということを、可能な限り広報活動をし、マスコミにも取り上げてもらいます。

WSPAでは、猫の世話の仕方についての基本的な知識を満載した冊子「あなたの猫の世話の仕方」を数カ国語で用意しています。

標識

猫を屋外あるいは屋内のどちらで飼うかに関わりなく、飼い主がわかるようにした首輪をはめます。屋内で飼っていても、猫はすぐに逃げ出しますし、迷子になったり、交通事故にあったりします。札やラベルなどに、飼い主の住所と電話番号を記入しておけば、猫を見つけた人にすぐに連絡してもらえます。 猫の首輪は、一箇所が伸縮自在になっていることが多く、枝や釘などに引っかかっても、逃げられる仕組みになってます。 公式の登録センターがあれば、そこに登録しておくのがよいでしょう。そうすると、猫の皮膚の下に、マイクロチップを挿入することになるかもしれません。特殊な読み取り器でこのマイクロチップを調べると、登録番号を知ることができます。この方法ですと、身元確認用の首輪のように、はずれたり、なくなったりする心配がありません。

マイクロチップ標識の最新情報については、WSPAにお問い合わせ下さい。

猫は、毛づくろいするために、水をたくさん必要とするので、頻繁に水を飲まなければなりません。水分は餌からもとりますが、のどが乾いたときのために、新しい水を常に用意してやりましょう。乾燥、半乾燥キャットフードを与える場合や、授乳している場合は、かなりの量の水を飲みます。

猫は、水の味に敏感で、塩素消毒をした水よりも、水溜りの水を好みます。水道水よりも、一度沸騰させてさましたもののほうがいいでしょう。

猫によっては、牛乳を飲むと下痢をします。餌の一環として与える必要はなく、喜んで飲まないようならば、与えるのをやめます。

猫が毛づくろいするのは、皮膚や毛を清潔にしておくためと、抜けた毛を取り除くためです。ノミやダニも取り除きます。飼い主は、定期的にブラッシングし、特に毛が抜ける時期には、毛づくろいを手伝ってやります。このときに、皮膚にしこりや傷がないか調べます。毛足の長い猫は、毛をたくさん飲み込んで、胃に毛玉ができてしまうことがあります。このようなことを防ぐために、毎日ブラッシングしましょう。

猫が毛づくろいをしなくなるということは、多くの場合、病気にかかっていることを意味します。猫は水につかるのが嫌いなので、洗ってやるのは難しいでしょう。きれいにしてやらなければならないときには、濡れた布で拭いてやります。

猫の抱き方

猫を抱くときには、猫が安心して心地よい抱き方をしてやります。必ず体には手を回すようにします。片手で両前足のあいだの胸を持ち上げ、もう片方の手を、両後ろ足に添えます。抱き上げれば、肘を曲げて腕に載せるようにしてもいいでしょう。

首筋をつかむと猫は動けなくなるので、扱いにくい猫をつかむには、とても便利な方法です。このような猫の反応は、親猫に対する子猫の反応に由来すると考えられます。母猫は、幼い子猫を運ぶときに、首筋をくわえます。

屋外で飼う猫と屋内で飼う猫

猫は好奇心が旺盛で、気ままな動物です。屋外の環境が安全であれば、家の外で遊び、歩き回ります。特に、木登りは大好きです。野生動物に猫の接近を知らせるために、首輪に鈴をつける人もいます。

猫を屋外へ出しても、いつでも家に戻ってこられるようにしておくことは重要で、猫のくぐり戸(跳ね上げ式)を設置することが望まれます。猫の首輪についた磁石に反応して跳ね上げ式の扉が開く仕組みのものもあり、このようなものであれば、野良猫やよその猫が家に入ってくるのを防ぐことができます。

猫を屋外に出すかどうかは、各個人が決めることです。しかし、爪を切った猫や、避妊去勢されていない猫は、逃げられないように囲った空間でなければ、屋外へは出さないほうがいいでしょう(猫の爪切りは、猫にとっては残酷な仕打ちなので、しないほうがよいでしょう)。

室内で育てられ、一度も屋外に出たことのない猫の多くは、限られた空間で生活することに満足するようです。屋外へ出ることに慣れてしまった猫は、屋内に閉じ込められることに、なかなか慣れません。

交通量が多い道路の脇に住んでいる人は、屋外に猫を出すのは危険だという理由から、室内で飼う人もいるようです。そのような場合には、猫が運動できるように、十分に広い空間と、好奇心を満たしてやる環境を用意してやることが重要です。室内で長時間留守番をさせるような時には、複数の猫を飼ったほうがいいでしょう。猫のおもちゃや爪とぎ棒は、猫を退屈させないためにも、また、猫が建物を傷つけないためにも、有効な道具です。庭の敷地の外は危険が多い場合には、屋外に猫用の運動スペースを作ってやります。


飼い主が長期不在になるとき

多くの国では、餌や水を与えないで、犬や猫だけを家の中に置いておくのは法律違反になります。飼い主が長期不在になるときには、誰かに猫の世話をしてもらうように手配します。

理想的なのは、猫は家に置いておき、信用できる近所の人やペットの世話を請け負う業者に頼んでいくことでしょう。安心できる設備が整った預かり施設に預けるのでもよいでしょう。猫を友人に預けるのは感心しません。猫は、逃げ出して自分の家へ戻ろうとすることが多いためです。

猫を運ぶときは、必ず、蓋や扉がしっかりと閉まる、猫運搬専用のケージに入れて運びます。猫を、このケージにあらかじめ慣らしておくと、実際に使うときに、それほど神経質になりません。

なわばり

猫は社会性が低い動物で、それぞれに縄張りを持って生活します。野良猫は、一番年長の雌を中心に、小さな集団を形成します。雄猫は、性的に成熟すると、集団から離れていきます。集団に属する雄は、その集団の縄張りを護りもしますが、近隣の集団に移ることもあります。

野良猫は、ほとんどの時間を、この縄張りの中で過ごしますが、さらに広い範囲を探索して回ります。この範囲を行動圏と呼びます。行動圏は、複数の猫、あるいは複数の猫集団の行動圏が重なる場合もあります。一つの餌場を複数の集団が仲良く利用するために、一つの集団とみなされることもあります。もしこのような餌場が、その大きな集団の生存を左右するほど重要なものであれば、侵略者から集団で餌場を護ろうとします。

ケンカ

血縁関係のない猫の集団では、ゆるい社会的順位づけがケンカによって決められます。いったん順位が決まると、その順位に従った行動をとるのでケンカはほとんどなくなります。しかし、猫を集団で飼うような収容施設のように、狭い空間に多数の猫がいると、ケンカが続くでしょう。強い雄が、他の雄に挑みかかったり、順位の低い猫が始終いじめられたりします。

飼い猫は、飼い主をこのような血縁関係の一員とみなし、縄張りを護るときには協力を求めてきます。

放尿

猫が尿をかけてまわる行動は、縄張りに印をつけるための習性です。飼い猫でも、自分の縄張りが他の猫に侵されていると感じると、家の中でも印つけの放尿をします。

繁殖

子猫やそれをかまう母猫は、見ていてもほほえましいものです。子供も子猫が大好きです。しかし、放っておくと、人間社会で対処できる以上の子猫が生まれてきてしまいます。雄猫は、睾丸が下降したすぐ後、通常生後6~10ヶ月で性的に成熟します。雌猫は、6~15ヶ月で性的に成熟し、その後、毎年発情します。子育ての期間は気候に左右されます。北ヨーロッパでは、3月から10月までの長期にわたります。

雌猫は一回の発情期に繰り返し発情します。つまり、発情期のあいだは、交尾が成功するまで、2、3週間ごとに数日間の発情を繰り返すということです。雌猫の高い鳴き声を聞きつけて雄猫が集まり、雌猫を奪い合う結果、雄猫がケンカをする鳴き声も加わる騒ぎになります。交尾は雌にとっては痛みを伴うものなので、高い声で鳴きます。雌の1回の発情は5日ほどで、複数の雄と交尾します。このような発情期には、付近の住人は猫の鳴き声に悩まされます。 妊娠期間は59~68日間で、平均出産数は4.5匹です。出産の4~6週後には、再び発情します。栄養状態の良い飼い猫ならば、1年に3回子供を産むでしょう。野良猫の場合は、1回か2回だけが普通です。野良猫は出産回数が少ないといっても、全く避妊去勢が行なわれないと、雌猫1匹から1年で子猫が10匹生まれます。2年目には元の親猫が産む子猫以外に、1年目に生まれた猫から50匹の子猫が生まれる計算になります。

計算上は、1匹の雌猫が数年間で数千匹に増えることになります。野良猫が生活する環境では、これほど増えることはありません。ところが、これほどたくさんの猫がすべて生きていけるはずがありません。子猫の多くは病気で死にます。猫が好きな人たちには、子猫が死んでいくのを見るのは耐え難く、野良猫対策として避妊去勢をするために立ち上がる場合が多いようです。

猫の行動

猫は、自分の気分や意思を、声、目つき、耳の向き、ひげの立て方、姿勢で示します。以下は、Michael W. Foxの「猫の行動と心理」から引用した写真です


  • 避妊去勢を効果的に行なう活動は、野良猫や野良犬の対策では、必ずしなければならないものです。しかしそれだけでなく、啓発活動や、「標識と登録」制度なども検討していきます。
  • 通常の避妊去勢手術では、雄は睾丸、雌は子宮と卵巣の除去を行ないます。雌は卵巣の除去だけで良いとする獣医もいます。雌の手術の際の切開箇所(正中腺か脇腹)は、診断や経験に基づいて、それぞれの獣医の判断で決めます。
  • 避妊去勢手術は、猫が性的に成熟する前がよいのか、後がよいのかについては、FECAVAの中でも見解が一致していません。それぞれの時期に行なう利点と弊害についての発表データを見ながら、獣医と飼い主が相談して決めていくのがよいと考えています。
  • 猫の数を減らすのが最重要課題である場合には、性的成熟前の避妊去勢は、有効な選択肢になります。
  • 性的成熟前の避妊去勢を行なう場合には、麻酔技術、外科的技術、回復設備についての準備が整っていれば、生後7週間の早期に行なうのが適当でしょう。
  • 避妊去勢は、それなりの麻酔技術と外科的技術が必要です。この条件が満たせないときには、手術をすることはできません。
  • 避妊去勢計画を実施する場合には、地元の獣医や、そのような活動をしている人たちも一緒になって計画するのがよいでしょう。
 出典:欧州コンパニオンアニマル獣医師連合会(FECAVA) 

野良猫から人にうつる病気もありますが、実際に感染することはほとんどありません。野良猫の集団を扱う場合でも、常識的な手順を踏み、衛生管理に気をつければ、猫から人への病気の伝播は最小限におさえることができます。

狂犬病

発生の頻度は少ないものの、人が狂犬病にかかることがあり、そうなると重大な事態になります。病気をもともと持っているのは、アライグマ、コウモリ、キツネ、スカンクなどですが、予防接種を受けていなければ、どんな哺乳類でも病気にかかっている可能性があります。人を咬む野良猫は、別に扱わなければいけません。狂犬病が発生する危険性のある国では、猫に予防接種をしておきます。

細菌感染症、咬み傷

猫の口腔の細菌は、感染すると、腫れ、炎症、疼痛を生じます。傷口はすぐに洗い、医師の診察を受けましょう。

猫ひっかき病

この病原菌に感染すると、リンパ腺が腫れて発熱し、疲労感、咽頭痛、頭痛を引き起こします。引っかかれた時にはすぐに洗浄し、心配な場合には医師の診察を受けます。

クラミジア症

この上気道感染症は、人が感染すると結膜炎を起こします。クラミジア症の猫をさわった後には、手をしっかり洗いましょう。

ライム病

シカダニが媒介する病気ですが、命にかかわることはありません。ただし、早期に正確な診断を受けて適切な治療を受けなければ、症状が重くなります。

真菌症、輪癬

輪癬は、飼い猫から感染することが一番多い病気です。野良猫を麻酔して傷などを調べたときに、この病気が疑われる病巣があれば、菌がいないか検査します。感染している疑いがある猫にさわる時には、手袋をはめます。

寄生虫:トキソプラズマ症、コウ虫、サナダムシ、回虫

トキソプラズマToxoplasma dondiiは腸内寄生菌で、調理が不十分な肉や生肉を、食べたり触ったりしたときに感染することが多い病気です。感染している猫は、トキソプラズマの接合子嚢を便に排出するので、妊娠中の女性は、野良猫や猫の排泄物には触れないようにします。

予防対策

野良猫の集団にかかわるときには、次のことに気をつけて、病気に感染するのを防ぎます。

  • 食べ残しは片付ける
  • ノミを駆除する
  • 猫の排泄場所を、清潔にする
  • 猫の数を減らすために避妊去勢処置を施す
  • 集団に属する猫には、すべて狂犬病の予防接種を施す
 出展:「路地裏の猫たち」 

これは、1992年に始まった「WSPAペットの尊厳を守る活動」の一環として行なわれた対策例で、現在も継続中です。

WASPが行なった猫を対象とする事業の中でも最も規模が大きいもので、詳細な記録がとられました。猫の数を人道的に減らし、猫の健康状態の向上をねらった事業です。

場所

ラムーは、ケニア北東部海岸沖にある人口1万2千人の島で、島民のほとんどはスワヒリ語を話すイスラム教徒です。アラブ人の貿易商が5世紀前に建設した町があります。道路はありますが、車が通るには狭すぎます。島には1台しか自動車がなく、荷物の運搬は、もっぱらロバに頼っています。島にはロバが200から300頭います。

1992年には、ラムーの町には、およそ4000匹もの野良猫がいました。WSPAは調査を行ない、多くが病気か衰弱していることを確認しました。猫の密度が高すぎることと、餌が足りないことが原因でした。

問題点

ここの自治体は、毒殺などの方法で猫の数を減らそうとしましたが、イスラム教徒が猫に対して抱いている特別な愛着のために、市民からの激しい抗議にあいました。にもかかわらず、地元の獣医師会は、狂犬病予防対策の一環として、猫をストリキニーネで毒殺して全滅させる計画を真剣に検討していました。

WSPAの提案

1992年にWSPAは、ラムーの獣医局支部の職員、地元の獣医、行政指導者との会合を持ち、猫の健康状態を改善すると同時に避妊去勢を行なうことによって、猫の数を人道的に減らす方法を検討しました。WSPAが提唱する方法は賛同を得ることができ、政府の獣医師団が協力してくれることになりました。獣医師2名を島に派遣し、診察を行なうと同時に、狂犬病の予防接種を無料で提供してくれるというものです。WSPAは、捕獲用のトラップ、動物用医薬品や麻酔薬を用意し、資金提供を行なうことになりました。

実施計画

第一段階:獣医の処置
1992年9月28日に、最初の動物診療所が路地に設営されました。人員は6人、簡単な設備と、医薬品とワクチンを入れた大きなクーラーボックスだけのスタートでした。初日に、127匹の猫を捕獲し、ワクチン接種と避妊去勢処置を行ないました。町の広報担当者は、獣医チームの目的は猫の避妊去勢を行なうことだと住民に知らせてまわりました。これは、市民の支持を得るために必要な啓発活動でした。2週間で784匹の猫に避妊去勢処置が施されました。そうこうするうちに、動物診療所として改装してもよい建物が見つかり、1992年11月11日に、WSPAラムー・プカ病院(ラムー猫病院)が開業しました。


第2段階:避妊去勢処置
市民は、最初は事業に懐疑的で、冷淡な反応しか示しませんでしたが、メディアによる前向きな報道のおかげで、人々の気持ちが変わってきました。そして、猫を診療所に連れてきて避妊去勢手術を受けさせるようになりました。10週間で559匹の猫が避妊去勢処置を受けました。1日平均59匹の計算になります。処置を受けたしるしとして、左耳の先端が切除されました。

避妊去勢処置に加えて、最初の年には2074件の、寄生虫・ノミ・疥癬の駆除、目の感染症・呼吸器疾患・他の感染症・骨折の治療が行なわれました。

2年目には診療所の知名度が上がり、住民による猫の持ち込みが続きました。3年目の終わりには、目に見えて状況が改善されました。病気の猫、飢えた猫、子猫の集団をラムーの路地で見かけることはなくなりました。ほとんどの猫は健康で、子連れの猫はほとんどいなくなりました。

4年目には、避妊去勢されていない猫を見つけるのは難しくなり、その年の終わりの1996年までに、ラムーにいた猫の92%が診療所で処置を受けたと見積もられています。当初の目的は達成されました。ラムーの猫は健康で、数も安定しています。

第三段階:継続調査
避妊去勢されていない猫が少数ながら残っていたので、また猫の数が増えないとも限りませんでした。そのような猫を継続的に監視するための処置がとられ、時々手術チームが派遣されることになりました。

この間に、この動物診療所のチームは、隣のファザ島に呼ばれ、島にいる1000頭ほどの猫に繁殖対策をしてほしいと頼まれました。ラムーの診療所開設からわずか4年後の1996年に、WSPAは、ファザ島猫診療所を開設しました。

 出展:WSPA報告書(Garry Richardson and Mike Pugh) 統計処理は、ケニア獣医局のI. M. Ragwaによるものです。 

猫の避妊去勢数:ラムー

 
1992/3 857 721 1578
1994 627 600 1272
1995 533 487 1020
1996 412 309 721
1997 137 110 241
1998 344 187 157
1999 304 284 588
2000 117 115 232
(2000年は1月~5月のみ)

猫の避妊去勢数:ファザ

 
1996 61 31 91
1997 386 307 693
1998 660 490 1150
1999 401 376 777
2000 138 122 260
(2000年は1月~5月のみ)

「ペットの尊厳を守る活動」事務局は,WSPAの一部門で、世界中のペット動物の生活状況や取り扱い方法の改善に努めています。以下の資料は、野良猫や野良犬に対する人道的な対策を示したもので、安価な動物医療はどのようにすれば提供できるかを示しています。動物福祉に関係する団体には、無料で差し上げます。いずれも、各国語の翻訳を用意しています。

ビデオ

●動物対策担当官(Animal Control Officer)
人道的な野良犬・野良猫対策を実施する際の動物対策担当官の役割の概要を解説し、動物の人道的な捕獲方法や取り扱い技術を紹介します。

●猫の飼い方(Care of the Cat)
捨て猫や野良猫が引き起こす問題、効果が薄い対策により生じる被害、および動物に与える苦痛に焦点を当てています。効果があがったさまざまな人道的対策を、世界中から集めた実例を示しながら解説します。

●野良犬・野良猫対策(Establishing A Stray Control Program)
野良犬や野良猫対策の実施初期の状況を解説します。新しい対策を導入して、それを普及させるためには、行政担当者、獣医、警察、マスメディア、動物保護団体、一般市民、すべてが参加することが求められます。

●人道的な安楽死(Humane Euthanasia)
世界各国で実施されている人道的な動物安楽死の技術を概説しています。

●イスタンブールのバス動物病院(Istanbul's Bus Hospitals)
イスタンブールの中心地に、バスを改造して作られた動物病院があり(あまり理想的とはいえませんが)、そこで行なわれている効果的な動物治療を紹介しています。この事業は、WSPAの「ペットの尊厳を守る活動」の一貫として支援されています。

●ラム&ファザ島の猫病院(Lamu & Faza Cat Clinics)
このビデオにはナレーションがありませんが、効果的で人道的な野良猫対策ならば、自動車もなく立派な施設もない島でも十分に効果を発揮することを紹介しています。ラム島とファザ島は、ケニア沖の島です。

●犬と猫の避妊去勢技術(Neutering Techniques for Cats and Dogs)
犬と猫の避妊去勢技術を習得しようとしている獣医のための手引です。性的成熟前の避妊去勢も含む手術手順を詳細に紹介しています。

●突発的事態や災害時にペットを守る方法、および畜産業者が災害に備えてすべきこと(Plan to Protect your Pets in case of Emergency or Disaster & Disaster Preparedness for Livestock Owners) 
WSPAの加盟団体であるアンティグア&バービュダ島動物愛護協会が作成しました。WSPAを通じて入手できます。

●猫カフェを作る(Setting up a Cat Café)
猫カフェとは、野良猫に餌をやって飼うために、ホテルなどの厨房や飲食店から離れた場所にしつらえた、猫のための空間です。

●野良犬対策(Stray Dog Control)
交通事故、咬傷事故、野犬の家畜襲撃、糞の処理問題、衛生問題の点から、野良犬が引き起こす問題、それによって犬が被る不幸、効果の薄い対策が生み出す目に見えない被害について考えます。そして、どのようにしたら効果的な対策を導入できるのかを、世界各地の例を紹介しながら解説します。


パンフレット

●動物対策担当官(Animal Control Officer)
人道的な野良犬・野良猫対策を実施する際の動物対策担当官の役割の概要を解説し、動物の人道的な捕獲方法や動物を扱う際に有用な道具を紹介します。

●猫の飼い方(Care for your Cat)
子供にも大人にもわかる一般的知識。

●犬の飼い方(Care for your Dog)
子供にも大人にもわかる一般的知識。

●猫カフェ(Cat Café)
猫カフェとは、野良猫に餌をやって飼うために、ホテルなどの厨房や飲食店から離れた場所にしつらえた、猫のための空間です。

●猫の飼い方と繁殖対策(Cat Care and Control)
政府、地方自治体、獣医、動物対策担当官、動物保護団体が、効果的で最新の野良猫対策についての理解を深めてそれを実現させていくのを助けます。

●動物福祉の考え方(Concepts in Animal Welfare)
獣医を養成する教育機関で動物福祉について教えるときに役立つ事例集。

●早期避妊手術(Early Age Neutering)
若い猫や犬に避妊去勢手術を施す際の注意事項をまとめた獣医師用の情報

●動物保護団体を設立してみよう(Establishing an Animal Protection Society)
啓発活動、キャンペーンの方法、行政への働きかけ方、一般市民との連携のとり方、マスメディア対策、必要な施設や世話の仕方、などについてのすぐに役立つ情報を盛り込んでいます。

●犬と猫の人道的安楽死(Humane Euthanasia for Cats and Dogs)
動物医療専門家のためのガイドライン。さまざまな安楽死の方法の詳細を示し、人道的な方法と非人道的な方法を比較しています。

●避妊去勢の重要性(Importance of Neutering)
犬や猫に避妊去勢処置を行なうことの重要性と利点についての概要です。

●動物保護施設の設計と運用(Planning and Running an Animal Shelter)
動物の保護預かり所を立ち上げて運営するために必要な実務と専門技術を解説しています。

●動物数の調査と、野良犬・野良猫対策の評価の仕方(Population Survey & Evaluation of Stray Control Programme)
野良犬・野良猫対策の成果はどのように見極めればよいのでしょうか。調査をするときのチェック項目も示しています。

●野良犬対策(Stray Dog Control)
政府、地方自治体、獣医、動物対策担当官、動物保護団体が、効果的で最新の野良犬対策についての理解を深めてそれを実現させていくのを助けます。

●WHO、WSPA 犬の個体数を制限するための指針(1990年)(WHO/WSPA Guidelines For Dog Population Management (1990))
学生向けの動物集団の維持管理の理論

「ペットの尊厳を守る活動」についての最新情報は、下記をごらんください。
http://www.wspa.org.uk



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